よく言われる人生の3大イベント資金である「住宅購入資金」「子供の教育資金」「老後の生活資金」の中でも、住宅を購入した場合には「住宅購入資金」が1番多額になる可能性が高い資金となります。 しかも、自宅を相続などにより無償で所有できる場合を除き、「ケース1」持ち家を購入するか、「ケース2」家を賃貸するかのいずれか2つの手段により居住することが必ず必要になります。そして、自宅を賃貸とする場合には、「ケース3」別途投資不動産を所有してその賃料を自宅の賃料に充てるという方法が考えられます。
そこで、永遠の議論である自宅を持ち家とするのが良いのか?賃貸とするのが良いのか?について、同一の場所で同じ家を保有する場合に、経済的に3つの選択肢のどれが得か?の判定をしてみようと思います!今回の考察ではお隣さんリスクや地震リスクなどの不確定の要素のほぼすべてを除外して、あえて投資不動産の空室リスクのみを考慮します。 この問題を公認会計士的に考察をすると、一旦、投資不動産を置いておくと、所有か賃貸かのどちらか2つの選択肢のいずれかを選択する必要があるため、原価計算の意思決定会計の概念を用いて考察を行えば良い問題であると考えられます。
意思決定会計では、持ち家の購入を選択した場合には、賃貸費用は機会収益になります。つまり、持ち家の購入を選択したことにより発生しなくなった原価を収益と捉えるのです。逆に、賃貸を選択した場合には、持ち家の購入コストは発生しない原価となることから機会収益となります。 前提として、完全に同じ土地、同じ建物の同じ間取りで、同じ設備の住居での比較を行うという仮定を置きます。この場合、賃貸の場合には、大家が経済的に合理的な行動を取る人であれ、購入費用、固定資産税、修繕費、税理士費用などのコストの負担をしたうえで(大家は自分で集客、物件管理を実施を仮定)、自分に利益が出るように賃料を設定します。そのため、2つのケースを比較した場合、各種コストは基本的に完全に一致するため、大家乗せた利益分だけ、自宅不動産を購入した場合の方が得になります。 30歳で独立をして、80歳で亡くなる場合、50年間の所有か賃貸かの選択をすることになりますが、大家が建物の賃貸価値に年間12万円の利益を乗せた場合、生涯で600万円(50年×12万円)自宅を所有した方が得ということになります。
また、土地の価値が購入時に500万円あり、その後時価の変動がない場合には、50年後に500万円で売却をすることができます。この場合、賃貸においては売却するものがないのに対し、自宅所有の場合には、500万円で売却をできることから建物賃料の利益上乗せがない分600万円(50年×12万円)+50年後の土地の売却価値500万円で合計1,100万円自宅を所有した方が経済的利益が出る計算となります。
さて、ここで第3の選択肢である自宅は賃貸し、投資不動産を所有することによる賃料と自宅の賃貸を相殺するという方法と自宅を購入する方法を比較してみます。前回の比較と同じように所有する自宅と投資不動産は完全に同一のスペックで、発生する経費や税金などのコストも完全一致しているとの前提を置きます。 この場合も前回の比較と同様に考えると、単に賃貸のみのケースとの比較で出た大家の利益分の得をしているケース同志の比較(機会収益としての得と実際の収益としての得の比較)となるため、両者の利益は完全に一致するということになります。
ここで、最初の前提に記載をした空室リスクを考慮すると、自宅を購入するという方法は、空室リスクのない自分を店子とする不動産投資ということになるため、空室が発生分、自宅を賃貸して投資不動産を購入するケースよりもお得になります! とすると、大きなレバレッジを効かせて一棟マンションを投資物件として所有するようなケースは別として、区分所有のマンションに投資をするくらいであれば、まずは自宅を所有するという方法が経済的に合理的な行動になると思われます。